あまり取り上げられない電源特性について

作成
2007/12/02 Sun
公開
2007/12/02 Sun
更新
2010/12/02 Thu

目次

  概要
  電力会社の供給電源電圧
  屋内配線の電圧降下と電圧変動の実測
  許容電圧変動幅
  パソコンの許容電圧変動幅
  パソコン電源の突入電流
  まとめ

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概要

 自作PCの話題では電源ユニットの話題は出てくるのですが、大元の商用電源の基本的な話はあまり話題になりません。電源ユニットについての議論を見ていると、有名サイトでも基礎的な部分に極端な誤解を残したまま疑義を挟まずに議論が進んでいるのを見かけます。

 よく見かける誤解の部分についてまとめました。


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電力会社の供給電源電圧

 電気事業法第26条、同施行規則第44条に規定されているそうです。

呼称電圧[V]標準電圧[V]
100101±6(95〜107)
200202±20(182〜222)

 電力会社の範囲と屋内配線の境目は積算電力計の所(2009/08/19 Wed追記:厳密な境目はもう少し電力会社よりの受電点)になりますので、積算電力計の所で95Vを下回っていれば法に基づく交渉の余地が出来る物と考えます。

 上記は、供給点での電圧ですので屋内配線による電圧降下を考慮していません。屋内配線による電圧降下に含めて、電源変動への耐性も含めて機器側が求められる動作可能電圧範囲が出てきます。


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屋内配線の電圧降下と電圧変動の実測

 家庭の屋内配線の電圧降下には明確な規定はないようです。しかし、内線規程で定められている基準に準拠することが多く、ほとんどの家庭で適応できるパターンの場合屋内配線の降下電圧は標準電圧の4%(101Vの場合4V以内)としているようです。(参考文献:社団法人日本電気協会 技術相談室Q&A 電圧降下「詳細はこちら」の図)このため、コンセントのでの電圧は以下のようになります。

呼称電圧[V]コンセントの電圧[V]
10091〜107
200174〜222

 実際には、ほとんどの電気工事の方が、コンセントでのテスターなどの実測値で「95Vを下回ることはまれにしたい」と、おっしゃいます。

 実際はどのような感じか示すために、当サイトのUPSの入力電圧の記録をしらべた物が下記の図になります。この電圧には瞬停など、瞬間的な電圧変動を含んでいません。テスターなどで読み取れるレベルの変動です。

電圧変動の実測値
測定期間
2008/09/18〜2008/01/11
サンプル数
9999
最大電圧
102.8V
最小電圧
94.3V
平均電圧
99.8V
標準偏差
0.97V

 このように、案外低い電圧が出ています。また、多くの人がこんなに100Vを超えることがあるのを気づいていないようです。一般的な印象と違うので、注意が必要です。


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許容電圧変動幅

 電力を供給される機器としてのパソコンの立場は少し微妙ですが、一応弱電機器に属すると思います。これについての規格は、日本電気学会電気規格調査会標準規格によって定まっているようです。これは無料では公開されていないようなのですが、これを参考に定めたであろう、「官庁営繕の技術基準」の「公共建築工事標準仕様(電気設備工事編)」に要求される許容範囲が書いてあります。

 これによると、弱電機器に当たる物は100V±10%(90V〜110V)に規定されているようです。

 これは設備として定められた物ですので、ラック内の配線やノイズフィルタ等による影響、機器としての余裕が必要です。このためパソコンをのぞく国内向け機器は、機器単体としては、100V±15%(85V〜115V)か国際的に使いやすいよう上限を拡張して85V〜135Vを定格にしている物が多いようです。

 許容電圧変動幅や設計指針について、記述のある本を探しました。

 「コンパクト版 電気設備工学ハンドブック(Amazonへのリンク)」には、残念ながら記述はありませんでした。「無停電電源システム実務読本(Amazonへのリンク)」に解説した記述があるようです。


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パソコンの許容電圧変動幅

 パソコンの電源はほとんど国内では作られていません。特に自作パソコンで用いられる電源ユニットの場合、ほとんどが海外製です。海外では、100Vと言う低い呼称電圧を使っている国は少なく、日本がほぼ下限になります。このため、入力電圧範囲の上限には大きな余裕を持つ電源ユニットが多いのですが、海外製電源のほとんどが入力電圧下限を90Vにしています。入力電圧範囲の下限が92Vの物を見かけた物もあります。入力電圧下限が92Vの場合、内線規程で定められている下限電圧91Vでは仕様外となります。90Vでもテーブルタップなどで長く引き回したときに十分な電圧ではなくなってしまいます。

 数少ないNIPRON等の国内製品(例えばePCSA-500P-X2S-MN)の多く入力電圧範囲は下限が余裕のある85Vになっているようです。しかし、NIPRONでさえ安価な物(例えばaNSP3-250P-S20)の入力電圧範囲は90V〜132Vです。

 このため、多くの電源で入力電圧範囲の下限に余裕がありません。実際にUPSが記録する半年分の電圧を調べると2007年9月22日93.6Vを記録しています。2007年11月の平均電圧を調べると99.98Vになりますので、この環境の普段の電圧が特に低いというわけではありません。また、「屋内配線の電圧降下と電圧の変動に実測」のように、低い電圧はとてもまれというわけではありません。このため、入力電圧の下限が92Vの電源を国内で使う場合に全く余裕が無く、テーブルタップなどで引き延ばしていると仕様を下回ってしまいます。こうなると、電圧が下がったときに突然リブートなどが起きたり、起動時の突入電流で電圧が下がるようなことがあるとうまくパソコンが起動しないなどの問題を起こしかねないことになります。

 入力電圧範囲は電源ユニットにとって重要な性能なのに、Webサイト上や購入時に分かるように表記のない電源が多くて困ります。


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パソコン電源の突入電流

 多くの電源は起動時に突入電流が流れます。数百Wから1KWをこえる大電力電源であるパソコン用の電源ユニットは、本来、大きな突入電流の流れやすい機器です。大きな突入電流は周辺の機器や自身に悪影響を及ぼします。このため、これを抑制する機構が組み込まれるのが普通です。

 これには2つの代表的な方式があります。一方は簡易に構成できる代わりに、電源を切ってから電源を入れるまでの間隔が短すぎると効果が薄れます(NTCサーミスタによる方法)。もう一方は構成が複雑になりやすい代わりに確実に動作します(リレーやSCRにる制限抵抗のショートによる方法)。

 突入電流をうまく抑制してないと、周辺の機器ばかりでなく、自身にも悪影響を及ぼします。特にUPSと組み合わせるときには注意が必要です。突入電流がうまく抑制できていないと以下のようなサイクルに陥ることがあります。

  1. UPSに電源が入る
  2. パソコン電源に電源が供給される
  3. 突入電流が流れる
  4. 突入電流で電圧降下が起こる
  5. UPSが停電を検出してバッテリー運転に切り替わる
  6. UPSのサージ電流の定格を超える
  7. UPSが停電かつ過電流状態になり停止する
  8. パソコン電源の電源が切れる
  9. 突入電流がとまり電圧降下が元に戻る
  10. UPSが通電を検出して商用電源直結に切り替える
  11. 2番に戻り繰り返す

 このサイクルにより電源ON-OFFを短い間隔で繰り返し、UPSの異常警告ばかりでなく、フラッシュに設定を蓄えている機器の設定が失われたり、HDDに影響が出ることがあります。ここまでひどい状態にならなくとも、エアコンの暖房で電圧の下がりやすい寒い朝の起動不良とか、電源ONのあとリセットボタンを押さないと起動しないう症状が発生することがあります。

 多くのパソコン用電源ユニットは入力電圧の下限が高いこともありUPSが無くても、間隔が短い似たようなサイクルにはいることがあります。せめて、突入電流について記述が有ればよいのですが、ほとんどのパソコン用電源ユニットにはこの記述がありません。

 NIPRONの場合、確実に動作する突入電流制限回路が実装が確認されている電源ユニット(PCSA-300P-X2S)があるのに、突入電流の記述がありません。また、別のメーカーは突入電流制限回路が正常に働いていないとしか思えない突入電流が発生する電源ユニットがあります。


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まとめ

 電源については出力の他に効率や静音について評価されます。また、規格に従えば取り付けなければならないPFC(Power Factor Correction:力率改善回路)等もうたい文句になります。

 これらに言及するのであれば、ここまで説明してきた電源ユニットの基本的仕様である、以下の2つについても情報が欲しいと思います。また、きちっと対応している機器を買いたいと思います。

 また、これ以外にも、通常のユニット電源で有れば記述している電源仕様についてWebサイトなどで公開して欲しいと思います。


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