DVD-Rの記録品質の実測

〜DVD-Rはそんなに短い期間で読み出せなくなるとは思えない〜
作成
2009/01/07 Wed
公開
2009/01/11 Sun
更新
2009/01/11 Sun
4−1.測定条件の中のリコールという表現を自主回収に変更。
2009/01/12 Mon
副題変更(思えないのだが?⇒思えない)、誤字訂正。
2009/01/13 Tue
全体にわたって文書校正、教えてgooの寿命についての意見のリンクを増加。
2009/01/15 Thu
4.実際の比較⇒4.実際の劣化の計測。
2009/02/03 Tue
4章までを中心に意味を変えないように校正
2009/02/05 Thu
型番の間違いを訂正 LF-M340JD ⇒ LF-D340JD
2009/04/05 Sun
4.実際の劣化の計測の表に、Manufacturer IDごとの品質情報を追加
2010/05/23 Sun
表1 メディアの種類に記載されているPIO Avgの数値に間違いを訂正。
PVC001001の最小19.94⇒10.67、分散712.45⇒21.39
PVCR001002の最大40.984⇒2.26、分散138.325⇒0.24
TTG01の平均16.56⇒34.90
2010/11/24 Wed
書籍の参考文献のAmazonの商品ページへのリンクを掲載。
2010/11/30 Tue
誤字を訂正。
統計の参考書のAmazonの商品ページへのリンクを掲載。

 DVD-Rに記録したデータがどのくらいの期間読み出すことが出来るか(アーカイバルライフ)は気になります。これについて、少しでも情報を増やすために、ここ7年ほどためたDVD-Rの記録品質を調べてみました。


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◎目次


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1.目的

 DVD-Rには2つの主要な寿命があります。一つは、DVD-Rに記録したデータがどのくらいの期間読み出すことが出来るかを表す寿命(アーカイバルライフ)です。もう一つは、いつまで記録することが出来るかを表す寿命(シェルフライフ)です。このうち、前者のアーカイバルライフについては多くの人が気にして、様々な意見が見受けられます。

 2003年頃の教えてgooでの回答などに見られるように、「平均寿命はCD-Rで2年前後以下、DVD-Rでもそれに相当するぐらいとなります。まあ、最長は10年〜20年ですから、あくまで平均と考えてください」等という意見もあります。もう少し最近の、2007年頃の教えてgooでの良回答でも「一説に5年と言われています。」と言う意見があります。一方、社団法人日本記録メディア工業会などのサイトでは10年ほどとしています。寿命に自信のあるメーカでは100年ほどの寿命(太陽誘電 That's FAQ)としているところもあります。

 公式な調査としては、財団法人機械システム振興協会の委託で財団法人デジタルコンテンツ協会が調査した「長期保存のための光ディスク媒体の開発に関するフィージビリティスタディ報告書(平成19年3月)」があり、このなかの91ページでDVD-Rの寿命の結果が述べられています。この推定では、国内ブランド品は数10年から100年程度の結論になっています。また、別ページでは、良い物は寿命が推定できないほど劣化の少ないことも記述されています。

 メーカの見解や財団法人デジタルコンテンツ協会の調査は加速度試験による物です。考慮しきれない影響もあります。しかし、いくらか加速度試験に誤差があるとはいえ2003年頃の教えてgooでの回答の様に平均2年前後以下で最長10年〜20年という意見も短すぎるように思います。

 幸い、私は2002年2月からの毎月数枚DVD-Rの記録がありますので、これの記録状態を調べれば、現在(2009/01/04 Sun)から7年弱の期間による劣化傾向を測ることがでます。個人の一例にしか過ぎませんが、比較的サンプル数も多く取れますので、実際の一般家庭における実時間経過による明白な劣化が有るのかどうかを含めて、様子を示すことが出来ると思います。

 よって、ここでは、私の手元にあるDVD-Rの記録のエラーを測定して、それをまとめました。


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2.結論


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3.比較方法

3−1.基本方針

 DVDは、高度なエラー訂正が行われます。通常の状態でこのエラー訂正が行われることを想定しているメディアです。このため、記録品質が悪くなっていても、ひどくなければ、エラー訂正が行われて読み出すことが出来ます。読み出せなくなるのは、このエラー訂正が破綻するほどの記録品質が悪くなった時です。

 このため、データが読み出せるかどうかでメディアの記録品質を判断すると、かなり記録品質が悪化したメディアしか検出できなくなる可能性があります。そもそも、経過年数から考えてそこまでひどい物はないと考えます。

 そこで、訂正前の生データ(raw data)のエラー発生量を測定してメディアの記録品質を測定することにします。

 測定する対象は2002年2月から貯めている、記録済みDVD-R群を使います。これは、特に寿命計測用に整った環境で保管されている物ではありません。温度や湿度を時に管理することなく普通の居室に保管された物です。

3−2.計測のための基礎知識

 DVDのエラー訂正は2つの段階からなります。

  1. ROWと言われる単位(182byte内10byteがパリティ)ごとに訂正されるPIエラー(PIE:エラー訂正前のエラー)の訂正
  2. ECCブロックと言われると単位(ROW208個内8個がパリティ)ごとに訂正されるPOエラー(POE:PIエラーを訂正した後も残るエラー)の訂正
  3. POエラーの訂正に失敗しPOFと呼ばれこのエラーが発生するとデータが読み取れ無いことがある

 規格上、8つの連続するECCブロック内でPIEが280を超えず、POEが4を超えるべきではないと言うことになっています。記録品質を考える場合、これが基準になります。

 記録品質を測るには、PIE、POE、POFを測ると品質基準に則した比較が出来ることになります。今回は、これを測ることにしました。

参考文献

3−3.計測方法と計測対象

 プレクスターのDVD±R/RWドライブには、PlexTools Professionalとよばれるソフトウエアが付属していました。これは、ただのユーティリティのレベルを超えて、各種品質測定の行えるツールです。

 今回は、プレクスターのDVD±R/RWドライブとして完成度の高いと考える、PX-716SAと、PlexTools Professional Ver. 2.36を組み合わせて使い、Q-check PI/PO test(SUM8 Test)を実行させ、PIE、POE、POFを測りました。

 普段、読み書き込みに使うドライブは別に用意し、PX-716SAはメディアへの書き込み状態のチェック専用に使っています。これにより半導体レーザのへたり防ぎ今まで寿命を延命してきました。ドライブを持ちこたえさせて試験に同じドライブを使い続けられるようにすることにより、結果を比較しやすしてきました。今回はこれを測定器としてフル回転させます。

 これに対して、計測対象のメディアであるDVD-Rには気を配っていません。あちらこちらに無造作に積み重ねてあり、一般の居室に保存されていた物です。特に高温高湿に制御された環境で保存された物ではありません。

DVDハードケース
写真1 DVDハードケース

 このようなハードケースにも保存していますが、このような物に保存しているのはごく一部です。

DVD不織布ケース
写真2 不織布ケース

 むしろ上記のように保存にあまり適さない、不織布ケースに入れてバインダに入れて重ねて保存しています。

DVDの保管状況
写真3 DVDの保管状況

 このように雑然と積まれていて、通常より悪い環境だと思います。

 普通はもう少しましだとは思いますが、保管場所の節約のために、似た状況の人は少なくないのでしょうか。特に数多くのDVDを蓄えている人は、不織布ケースにいれてバインダに保存しているというのは一般的ではないかと思います。

 このように保存状況が理想的でないDVD-Rを対象としてメディアの品質を計測します。


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4.実際の劣化の計測

4−1.測定条件

測定用ドライブ

品名
DVD±R/RWドライブ
ブランド(製造元)
プレクスター(シナノケンシ株式会社)
製品名称
PX-716SA
ファームウエア
Ver. 1.10

測定ソフトウエア

ソフトウエア名
PlexTools Professional
著作権者表記
Plextor SA/NV
バージョン
Ver. 2.36
試験名
Q-Check PI/PO Test SUM8 Test

対象メディア

総枚数
334枚
サンプル数
91枚
サンプル率
27%
表1 メディアの種類
製造Manufacturer ID 枚数比率[%] PIE AvgPIE Max
最大最小平均分散 最大最小平均分散
太陽誘電 TAIYOYUDEN3 57 28.38 3.33 15.91 156.88 67.00 16.00 43.33 660.33
TYG019 95.67 0.97 18.42 984.90 540.00 10.00 85.44 29607.53
TYG021 12.80 12.80 12.80 個数不足 40.00 40.00 40.00 個数不足
TYG0339 13.30 1.67 5.67 7.48 135.00 10.00 41.39 759.15
日立マクセル MXL RG015 29 84.19 19.49 36.61 721.45 158.00 54.00 101.20 1637.20
MXL RG028 40.98 5.11 23.99 138.32 123.00 42.00 76.63 1139.98
MXL RG0313 72.61 2.75 25.95 419.31 233.00 18.00 77.85 3550.97
パイオニア PVC0010018 12 24.11 10.76 16.56 21.39 85.00 44.00 62.50 176.57
PVCR0010023 2.26 1.30 1.84 0.24 24.00 14.00 17.33 33.33
TDK TTG012 2 35.39 34.40 34.90 個数不十分 90.00 87.00 88.50 個数不十分

 DVD-R導入初期には、ビデオ形式で試し書きした物をDVDの再生専用機で再生してみて、問題なく再生できるかで記録品質を判別していました。激安メディア類では、この程度でも再生できない品質でしか書き込めない物が多発しました。このため、安さより安心を取って、ライセンス料を正しく払ってライセンスに厳しく準拠しようとしていると推測できる国内ブランドを常用していました。

 2005年中頃以降は、メディアの書き込み品質を測定する準備が出来たので新しいManufacturer IDのDVD-Rを使うときには、その時にメインに使っているドライブで試し焼きを実施し、PIEの平均値(PIE Avg)が140を超えたり、POEが1つでも検出したメディアは使わないようにしています。このため、実質、Manufacturer IDごとに選別を行った形になっています。

 激安ブランドのメディア、それも電気量販店どころかGMSで売っていたような、激安の中でも特に大量に販売されていたようなブランドのメディアでも、少なからずが公式の基準(PIE Max が280を下回る)すら守れない書き込みしか出来ていませんでした。このため、2006年初め頃から主力に太陽誘電を使いはじめ、時々安いメディアを買ってみるという形に変化しました。しかし、結局に一度も本番に使えると判断した激安ブランドには巡り会えませんでした。

 安いメディアに、自身で定めた基準にたる物に巡り会わなかったため、2007年頃から、太陽誘電を主力にして、他もライセンス料を正しく払ってライセンスに厳しく準拠しようとしていると推測されるブランド品(生産国は海外を含む)しか購入しなくなっていますので、メディアの種類は少なくなっています。

 なお、今回のサンプルの中には国内ブランド品の三菱化学メディア(旧三菱化学)製ディスクがありません。これは、初期に「SONY DVD/CDリライタブルドライブ DRX-500UL」を使っていたためです。このドライブは、2002年7月〜9月に販売の三菱化学のメディアで書き込み不良になる可能性があったため、以降しばらく使うのにためらったのです。実際には、このように正直にリコール自主回収をかけてくれるような出荷後の品質管理にも気を遣うようなメーカーのメディアは、後の品質で問題になる物に当たることはむしろ少ないと思います。

 実際DVD-R DLやDVD-RAM等では使っていますが、問題となるような物には巡り会っていません。しかし、普通のDVD-Rのスピンドルケースのものを身近で見かけなかったため、使用量が少なく、結局、測定サンプルとなっていません。

4−2.測定結果

記録日とPIE(SUM8)

主に使った書き込みドライブ

  1. 2002年初頃〜2003年中頃 Panasonic LF-D340JD
  2. 2003年中頃〜2004年秋頃 SONY DRX-500UL
  3. 2004年秋頃〜2005年中頃 Panasonic LF-M760JD
  4. 2005年中頃〜2006年末頃 Plexter PX-712A
  5. 2006年末頃〜2008年初頃 Buffalo DVM-RXG18FB/B(パイオニア DVR-112D)
  6. 2008年初頃〜 パイオニア DVR-115D

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5.考察

 グラフを見てもらうと、PIEが大きく変化していく様子が分かると思います。変化してはいるものの、7年程度の期間でエラーが増えていっている様子はありません。この様子であれば、10年どころかもっと持ちそうです。正しくDVDの規格を守ったハードケースに入れてあれば、太陽誘電 That's FAQにあるように100年もつというのも十分納得できると感じます。

 ところで、2005月6月中頃に大きくPIEが基準を超えているメディアがあるのが分かると思います。この時のエラー分布は以下の通りです。

2005-06-16のTYG01のPIE
図1 2005年6月16日記録のTYG01のPI/PO Test

 以下はこの一つ前のメディアのエラー分布です。すでにエラーが増えています。

2005-06-02のMXL RG03のPIE
図2 2005年6月2日記録のMXL RG03のPI/PO Test

 上記2つのメディアはは太陽誘電TYG01と日立マクセルMXL RG03で全く別物すので、メディアのロット不良と言うことはありません。また、これ以前のMXL RG03の書き込みでは、さほどおかしな様子もなく書き込めています。さらに、通常良くある周辺部のエラー増加ではなく、内周のエラー増加です。このような状況ながらDVD-RAMの記録などには異常がありませんので書き込みに使われている半導体レーザの異常という感じでもありません。

 ピット・ランドの書き込み具合を調べるTA Testの結果は以下の通りです。

2005-06-16のTYG01のTA Test ぼろぼろの状態
図3 2005年6月16日記録のTYG01のTA Test

 もう、山の分離が悪く形が崩れぼろぼろの状態です。山の中心位置もかなりずれています。ちゃんとした状態の物は以下の通りになります。

2008-03-28のTYG03のTA Test とても良好です。
図4 2008年3月28日記録のTYG03のTA Test

 山も分離し、中心位置も正しくあっています。図4ぐらい正しい状態であると、エラーも少なくなります。

2008-03-28のTYG03のPIE
図5 2008年3月28日記録のTYG03のPI/PO Test

 図1、図3〜4を比べてもらうと分かるように、記録品質が悪いメディアは、良い物とは明らかに異なる特徴的な傾向を示します。

 異常なエラーを示した2005年6月16日記録のTYG01の場合、図3のように中心位置が左に寄ったり右に寄ったりしています。この状況を見ると、書き込みに使用したドライブが正しいピット長を書き込んでいない物と考えます。当時も、ドライブの書き込み品質が良くない物と考えて以降このドライブでのDVD−Rの書き込みを行わずに、次のドライブの購入まで書き込みをひかえています。また、これ以前も以降も、TYG01でこのような問題が発生しておらず、むしろPIEの低いメディアに分類されます。よって、PIEの悪化は劣化の問題でが主要な問題ではなくはなく、ドライブの書き込み品質が主な要因であると考えます。

 この辺りも含め、解析的な劣化を調べるには、同じものを、期間を空けて測定する必要がありま。あと5年ぐらい経ってもう一度測ってみたいと考えております。

 解析的な劣化は分からずとも、統計的な劣化傾向は分かります。現状、基準を超えている一枚を除けば、この章の最初に述べたように7年ほど前のディスクでもPIEは十分読み出しに余裕のある状況です。現行では経年劣化より使用したドライブとメディアの組み合わせ影響が大きく思えます。

 2005年初め頃までは、PIEの変化に年周期の変化が見られます。これ以降は、書き込み品質を監視して書き込みパラメータを変化させるオートストラテジ等の技術がドライブに導入されています。これより前は、室温などの影響が書き込み品質に影響を与えているようです。劣化に比べればこの影響は大きかったようなので、オートストラテジ等の技術の導入は、書き込み品質の向上に大きく役立っていると考えます。

 結局のところ、7年ほどの期間では、ドライブの書き込み品質や、メディアとドライブの相性や品質、ドライブの書き込み性能の劣化の影響が大きく、経年変化による劣化を心配する状況ではないようです。

 また、平均的に2〜5年の短い寿命(アーカイバルライフ)と言うようなことは、ライセンス料を正しく払ってライセンスに厳しく準拠しようとしている国内ブランド(生産国は外国を含む)を使っている条件下では無いと思います。もっと長いことを当サイトの実測値を示しています。

 それでも、実際には数年で読み出せなくなると言う意見を見聞きします。これは、元々DVDの規格に満たない書き込みしか出来ないドライブとメディアの組み合わせで作成された物が、数年後に読み出せなくなっていると言うことが起きているのではないかと推測します。前述したようにGMS等で大量に安売りされていたメディアが、初めから規格の定めたPIEの基準を満たしていない記録品質の書き込みしかできなかったことを経験しています。この場合、寿命(アーカイバルライフ)は、「無い」と言うことになります。これは、財団法人デジタルコンテンツ協会が調査した「長期保存のための光ディスク媒体の開発に関するフィージビリティスタディ報告書(平成19年3月)」の記述とも合致します。

 この状況下では、劣化を気にする前に、良い品質で記録するであろうドライブと、安定した書き込みが出来るメディアを選択する方が、読み出せると言うことを確保するには重要であると考えます。


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