WD5000AAKS-00A7B0の記録密度はどうなっているのか

−HDDの記録密度同定の困難性(確定できていません)−
作成
2008/08/24 Sun
公開
2008/08/25 Mon
更新
2008/08/25 Mon

 WesternDigital製HDDのWD5000AAKSシリーズのWD5000AAKS-00A7B0はプラッタあたり容量にはっきりしないところがありますので、確定のために解析を試みました。1プラッタあたり250Gbyte級のディスクであるらしいのですが、妥当と言える結論までには至りませんでした。以下はその解析についての報告です。


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◎目次


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1.目的

 WesternDigital製HDDのWD5000AAKS-00A7B0は、2008年春頃、1プラッタ320GByte級の高密度プラッタを使用しているという噂が流れました。多くの個人ブログでもそのような記述が見受けられますし、2008年4月終わり頃の販売店の告知でも「お待たせしましたー!!!Western Digital!! WD5000AAKS-00A7B0! 1プラッタ 320G×2で500Gを構成しております。」との記述が残っています。

 しかし、ベンチマークを取ると、250Gbyte級プラッタ採用HDD同等の性能しかでていません。このため250Gbyte級プラッタを使っているのではないかとするサイトも増えています。また、多くの店のPOPからも1プラッタあたりの容量についての記述が消え「非公開」とか「???」などの記述になっています(2008/08/20 Wed現在)。この解析を行うためにヨドバシカメラ梅田店で2008年5月27日に購入したときも店内表示では1プラッタあたりの容量は「???」との記述でした。

 ベンチマークを取ると、以下のように250GByte級プラッタのHDDのベンチマーク結果になります。

WD Caviar SE16 (WD5000AAKS-00A7B0)
Test Size[ MB ] 50MB100MB500MB1000MB
Sequential Read 106.663 97.557 91.988 90.465
Sequential Write 101.623 95.571 88.138 86.997
Random Read 512KB 57.091 50.993 45.849 44.337
Random Write 512KB 90.087 74.737 62.498 60.243
Random Read 4KB 1.040 0.845 0.730 0.734
Random Write 4KB 3.273 2.789 2.640 2.529
Firmware : 01.03B01
Date     : 2008/08/03
IF       : 玄人志向 SATA2RAID-PCIX (Silicon Image SiI3124)
Format   : NTFS
BM時IF   : Generation 2:3.0Gbit/sec(SATA300接続)
Benchmark: CrystalDiskMark 2.1 (C) 2007-2008 hiyohiyo

 このようにCrystalDiskMark 2.1でシーケンシャルアクセスの転送速度が100MByte/sそこそこしかなく、1プラッタあたり320Gbyte級の容量を持つ高密度プラッタを使ったHDDのベンチマーク結果の感じではありません。


HD Tune: WDC WD5000AAKS-00A7B0 Benchmark

Transfer Rate Minimum : 37.6 MB/sec
Transfer Rate Maximum : 93.9 MB/sec
Transfer Rate Average : 69.6 MB/sec
Access Time           : 12.6 ms
Burst Rate            : 131.2 MB/sec
CPU Usage             : 4.1%

Firmware : 01.03B01
Date     : 2008/08/03
IF       : 玄人志向 SATA2RAID-PCIX (Silicon Image SiI3124)
Format   : NTFS
BM時IF   : Generation 2:3.0Gbit/sec(SATA300接続)

 HD Tuneの結果も同じ傾向を示しています。両ベンチマークの結果とも250Gbyte級プラッタのHDDのベンチマークに見えます。

 このような結果でも、ベンチマークの場合、320Gbyte級プラッタで250Gbyte級プラッタ程度の性能しか出ない巧く性能が出ていないHDDなのか、それとも元々250Gbyte級プラッタなのかがはっきりしません。これは、ファームウエアのアップデートで改善の望があるのかどうか?等の疑問に関わります。

 使う立場としては内部がどうあろうと、250Gbyte級プラッタ相当の性能しかでないのでればそのような性能のHDDとして扱えば良いだけなのですが、確定できれば評価も確定させやすいので、1プラッタあたりの記憶容量の確定を試みることにしました。

 しかし、結局は十分な確証を得られませんでした。

 以下の文書ではその測定結果について解説します。


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2.結論


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3.確認方法

3−1.確認方法の考え方

 500Gbyte級のHDDを320〜333Gbyte級プラッタで構成するには以下の3つの方法があると考えます。

 (1)を確認するためには、HDDを開けてみてヘッドが3つであればはっきりします。

 (1)でない場合、ヘッドの見える状態で動作させてみて、ヘッドが動く範囲を確かめて、内周8割ほどしか使わなければ(2)であるとはっきりします。しかしクリーンルームはとても準備できませんので、動作させるチャンスは開けた直後の1回だけだと思います。

 (1)と(2)でない場合、(3)の可能性が高くなるわけですが、これはヘッドからの出力信号が250Gbyte級プラッタの出力信号と同じ形式であることを確認した後プラッタの材質を調べるぐらいしかないように思います。それには同一メーカ同じ世代の320Gbyte級HDDを分解してプラッタの材質比較をしないと分からないように思います。この場合、ヘッドからの出力信号が250Gbyte級プラッタが確認された時点で物理フォーマット上は250Gbyte級のプラッタであると言う解釈もあると思います。

 ここまで個人でやろうと思うと、工業技術センターに持ち込むくらいしかないように思いますが、少し無理があります。よって、ここまで行くと確定的な結論が出せません。

 このような状況下でベンチマークの性能の出方を見ると(3)の可能性が高いように思いますので、今回結論が出ない可能性が高い分の悪い解析だと思います。

3−2.ヘッド構成を調べる

 以下の通り解析したのはWD5000AAKS-00A7B0です。2008年5月27日にヨドバシカメラ梅田店で入手しました。

WD5000AAKS-00A7B0全景 WD5000AAKS-00A7B0ラベルクローズアップ

 完動品ですが意を決していつも通り分解します。

ネジ位置

 いつも通り黒いシールを剥がすとネジが出てきます。ラベルの左下の裏にもネジが一つあります。矢印の位置がネジの位置です。WD10EACS-00D6B0と同じネジの構成です。防振の仕方もほぼ同じです。

 ネジもいつも通りトルクス(ヘックスローブ)と呼ばれるネジです。トルクスは、専用のネジ回しで扱います。

トルクスドライバーセット ドライバセットの先端形状表

 ネジを外します。

シールを全て取り除いたところ

 ラベルの裏にネジがあるところに気がつけば簡単に開けられます。

開いたところ

 WD10EACS-00D6B0と中の様子がよく似ています。ヘッドアームも同じ4本見えます。ヘッドが3〜4つと思っていたのでアームは2〜3本だと思っていましたが異なりました。

ランプロード

 やはりヘッドアームが4つでヘッドは4つ有ります。3プラッタ用のヘッド構成からまん中のプラッタをのぞいた2プラッタ構成であることが確認できます。3−1.の(1)で想定した構成でないことが確定しました。

3−3.ヘッドの稼動域を調べる

 開けた状態のWD5000AAKS-00A7B0をeSATA接続した裸族のお立ち台eSATAプラス(Century CROSEU2)にHDDを取り付けて動作させヘッドの様子を観察します。これにより、ヘッドの稼動域を調べます。

 クリーンルームで開けていないので正常に動作するかどうかわかりません。正しく動いたとしても1回だけだと思います。1回だけ動くとしても最後のほうは動作がおかしくなると思います。

 このため、ディスク上を動くのはほんの一瞬になると思い、一発勝負に賭けました。記録が詳細にチェックできるようにデジタルカメラのRICOH Caplio GX100の動画撮影モードで記録しました。

ヘッドの動きの様子(MPEG2) ヘッドの動きの様子(MPEG4)

 モーターが回転し始めた後、ヘッドがいったん最内周まで動いて1度アンロードされます。その後、外周にヘッドがアクセスした後、最内周まで動いて再度アンロードさせれます。このヘッドがアクセスした外周から最内周までがこのHDDの可動域である可能性が高いと思います。

 この可動域は外周から内周までの範囲はほぼすべての範囲を使っており内周8割に限定されている感じではないと思います。この動作は通常環境下で開いて異常動作した結果かも知れません。しかし、ほぼ内周から外周まで全域を使っていると考えるほうがよりそれらしいように思います。

 これらより、3−1.の(2)の可能性もほとんどなくなったように思います。


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4.考察

4−1.プラッタあたり容量について

 上記3−2.の結果より2プラッタなのは間違いありませんので、WD5000AAKS-00TMA0/-22TMA0/-00YGA0のように250Gbyte未満の記録密度の可能性はありません。250Gbyte以上の記録密度のプラッタが使われています。3−3.の結果より250Gbyteを大きく超える記録密度を持つプラッタを使っている可能性はあまり高くないように考えます。

 ベンチマークの結果を考えると、3−1.の(3)のパターンか、250Gbyteの記録密度を持つプラッタを使っている可能性が濃厚のように思います。しかし、回転速度推定の時のように妥当と言えるほどの物証は得られていません。あくまでその方が濃厚であるというレベルの推測の域です。

 よって結論としては、WD5000AAKS-00A7B0は、1プラッタあたり250Gbyteの容量を持つプラッタ2枚で構成であると考える方が良さそうには思えるが、確証は得られなかったということになります。

4−2.プラッタ容量と商品構成

 今回解析したWD5000AAKS-00A7B0の内部構成は、3−2でも書きましたがWD10EACS-00D6B0と中の様子がよく似ています。2プラッタであれば、3アーム4ヘッド構成のヘッドセットで組めるところをあえて3プラッタと同じ4アーム構成のヘッドセットで真ん中の1プラッタを抜いただけの構成を取っています。

 また、WDCの商品構成で7200rpmのディスクで250Gbyte級のプラッタを使った3〜4プラッタのディスクが見あたらないのも気になります。あるのはEACS系かAACS系の5400rpmのディスク群です。

 気流制御の問題などがプラッタ間の詰まった3〜4プラッタ構成では出やすくなります。250Gbyte級のプラッタの世代ではプラッタ間の詰まった7200rpmのHDDをどうも巧く量産ができていなかったのではないかと思います。もしそうだとするとWDCにとってはかなり不本意なことに用に思えます。そうであればEACS系やAACS系の回転速度についてのメーカー発表がどうもはっきりしなかった理由と符合します。

 しかし、これは、現行一般に知られている商品構成と、数機種を分解した結果に基づくものからの私の憶測に過ぎません。また、この辺りの事情についてメーカ発表が行われることはないと思いますので謎のままになるのだと思います。

 もしこのような問題があったのだとしても現行の320〜334Gbyte級のプラッタについては、7200rpmで3プラッタのWD1001FALS-00J7Bが発売されていますのでこの問題は克服されているのだと思います。


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