WD10EACS-00D6B0のディスク回転速度はどうなっているのか

−HDDの回転速度測定の1方法による再検証−
作成
2008/06/12 Thu
公開
2008/06/12 Thu
更新
2011/02/23 Wed

 以前「WDC Caviar GPのディスク回転速度どうなっているのか」で、「WD10EACS」のディスクの回転速度をなるべく直接的な方法で計測してみました。今回は、新型の「WD10EACS-00D6B0」が出ましたので、これのディスクの回転速度を同じ方法で計測しました。それについて記述します。

 なお、新しいWD10EADS-00L5B1については、ここに記述されている方法を一部省略したやり方で回転速度を5,400rpmと推定していますので、WD10EADS-00L5B1の方を参照してください。(2008/12/24 Wed追記)

 さらに、WD20EADS-00R6B0については、振動解析による方法で回転速度を5,400rpmと推定していますので、HDDの振動解析による回転速度の特定方法の方を参照してください。WD5000AADS-00S9B0については、ここに記述されている方法と改良された振動解析による方法で回転速度を5,000rpmと推定していますので、WD5000AADS-00S9B0はどうなっているのかの方を参照してください。(2009/07/27 Mon追記)

 当公開サイトに掲載したWD Caviari Greenシリーズのディスク回転速度が固定(一定)と考えるのが妥当とした、一連の記事に対して投げかけられた疑問や批評に対する回答をまとめて「WD Caviar Greenのディスク回転速度測定についてのまとめ」に記載しています。(2011/02/23 Wed追記)


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◎目次


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1.目的

 WD Caviar GP は、初期の宣伝の曖昧さもあり、HDDでは革新的な、動作中の可変回転速度を実現させたと言われていました。しかし、その後疑問が投げかけられ、あちらこちらで様々な方法で調べられました。結局、回転速度5,400rpm5,000rpm〜7,200rpmのいずれかで固定されて出荷されているというのが妥当という解釈が大勢になっているようです。私も現在はそのように思っています。この辺りの経緯については「WDC Caviar GPのディスク回転速度どうなっているのか」の方を見てください。

(注記2009/07/27 Mon)実測で5,000rpmと推定されるのWD5000AADS-00S9B0が見つかったので5,400rpm〜7,200rpm⇒5,000rpm〜7,200rpmに訂正しました。

 それでも、今回こそ、新しいCaviar GPでは、可変が実現されたのではないか、回転速度が7200rpmが基本になったのではないかという話が出ています。特に、ベンチマークで良い値が出ているため、回転速度が7200rpmになったとの期待が高いようです。

 そこで「WDC Caviar GPのディスク回転速度どうなっているのか」と同じ方法で、新型の「WD10EACS-00D6B0」のディスク回転速度を計測しました。

 今回は前回と違い、購入したときの箱に5400rpmとの記述があり、測るまでもなく5400rpm固定が濃厚です。

ツクモで購入したときの箱にはラベルが貼ってあります ラベルには5400rpmとの記述が有ります

 前回でも述べましたとおりWD Caviar GPは中が見えないので、モータドライブ電流を測ってみることにしました。そして分解してモータの極数を計測し、私のもっているWD10EACS-00D6B0は、今回も5,400rpm固定であると結論を得ました。

 以下の文書では其の測定結果について解説します。


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2.結論


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3.測定方法

3−1.測定の考え方

 「WDC Caviar GPのディスク回転速度どうなっているのか」で記述したことの繰り返しになりますがHDDのスピンドルモータはDCブラシレスモータであることがほとんどです。モータの極数と駆動周波数を測れば回転速度が分かります。

N[rpm]=60[rpm/rps]*2f[Hz]/p[1/r]
N[rpm]
回転速度[回転/分]
60[rpm/rps]
単位変換[(回転/分)/(回転/秒)]
f[Hz]
駆動周波数[Hz=1/秒]
p
極数[1/回転]
[r]
[revolutions] = [回転]
[rps]
[revolutions per scond] = [回転/秒]
[rpm]
[revolutions per minute] = [回転/分]

 駆動周波数は動作中にモータのコイルに供給される電圧波形を測定すれば判明します。回転速度が変わるときには駆動周波数が変わるので、負荷をかけながら駆動周波数を観測すれば可変かどうかも判明します。

 極数は軸の回りにある磁極(磁石)の数です。コイルに直流電流を流せば磁極(磁石)の一方と引き合います。4極(N極2つとS極2つ)のモータであれば、磁石とコイルは2回引き合います。このため分解してスピンドルモータの軸を手で回せる状態にした後、コイルにに一定電流を流した状態で、1回転の中で引っかかりのある回数の2倍が極数ということになります。

 ブラシレスDCモータの場合、その極数は4極か8極が多くなりますので、引っかかりのある数は手で十分数えられる回数になるはずです。

参考文献

3−2.動作した状態での測定

 以下の通り測定したのはWD10EACS-00D6B0です。2008/06/11 Wedツクモ梅田店で入手しました。

WD10EACS-00D6B0全景 WD10EACS-00D6B0ラベルクローズアップ

 eSATA接続した裸族のお立ち台eSATAプラス(Century CROSEU2)にHDDを取り付けてモータの駆動周波数をディジタルオシロ(IWATSU DS-8824)で調べてみました。

モータの電源供給点

 まずは立ち上がり直後の無負荷の時の駆動波形です。

359Hzと測定されている

 エッジにカーソルが合わせてあります。カーソルからカーソルまでの時間(Δt)の逆数である1/Δtが駆動周波数になります。測定結果として約359Hzで駆動されています。画像の下の方にある f= 0 Hz は駆動周波数の測定結果ではありません。

 次は、CrystalDiskMark 2.1でテストサイズ1,000MBでシーケンシャルアクセスしているときの波形です。

359Hzと測定されている

 これも、エッジからエッジまでを測ると約359Hzとなります。この周波数で駆動されているようです。ここでは、f=33.879kHzと出ていますが、これは各駆動期間(黒い部分の中)のPWMの周波数が計測されているようです。

 次は、ランダムアクセス(512KB)しているときの波形です。

これも359Hzと測定されている

 これも、エッジからエッジまでを測ると約359Hzになります。先ほどと同じ周波数で駆動されているようです。

 念を入れて、30分放置してみました。

これも359Hzで変化はない

 やはり、変化はありません。

追加:2008/06/17 Tue

 負荷の他に、CD等のように内周のアクセスと外周アクセスでで回転速度を変化させている可能性があることに気がつきました。上記は空の状態で計測しているので外周のアクセスを行った状態で測定していることになります。内周のアクセスを行うために、内周のパーティションを作成し、そこのベンチマークをとることにより内周のアクセスを発生させる事にしました。

3つパーティションをつくり内周をアクセスできるようにした

 赤い矢印が指すパーティションがこれに相当します。次の図が、ここをCrystalDiskMark 2.1でテストサイズ1,000MBでシーケンシャルアクセスしているときの波形です。

364Hzでほぼ同じ

 364Hzとなって少し周波数が上がっていますが、ほとんど差がありません。

 以上の結果、HDDにアクセスの負荷をかけてもかけなくとも、また、外周でも内周でも、約360Hz程度で駆動されていることが分かります。

3−3.分解しての測定

 駆動周波数が分かりましたので、極数が分かれば3−1.で述べた式で回転速度が分かります。方針の通り分解して極数を調べます。

 このHDDは、新品で完動品だったため、今回は駆動音のFFT解析にして分解しないでおこうかとも思いましたが、静かすぎて音が巧く拾えず駆動音による解析は断念しました。このため結局分解することにしました。

ネジ位置

 左が旧WD10EACSです。右が新WD10EACSのWD10EACS-00D6B0です。

 黒いシールを剥がすとネジが出てきます。ラベルの左下の裏にもネジが一つあります。矢印の位置がネジの位置です。旧タイプの4プラッタの場合、スピンドルが両持ちのこともありネジが多くなっています。また上蓋の防振も念入りです。

 前回と同じトルクス(ヘックスローブ)と呼ばれるネジです。トルクスは、専用のねじ回しで扱います。

トルクスドライバーセット ドライバセットの先端形状表

 ネジを外します。

シールを全て取り除いたところ

 ラベルの裏にネジがあるところに気がつけば簡単に開けられます。

開いたところ

 このHDDはロードアンロード方式のはずです。開けると、ちゃんトランプにヘッドが収まっています。これが本来の状態です。

ランプロード

 ヘッドアームが4つでヘッドは6つ有ります。3プラッタ用のヘッド構成であることが確認できます。スペック通り3プラッタ6面で有ることが確認できます。

間の板

 プラッタを1枚外すとプラッタ間に板が現れます。気流を整える物でしょう。これより下のプラッタを外すためにはヘッドのストッパを外す必要があります。

プラットを取り除いた状態

 プラッタを全部取り除くとこんな調子です。ここまで分解しなくとも極数を調べられるのですが、今回も前回と同じく完全にプラッタを外してみました。

コイルに電流を流し込む CCで動作している実験電源

 適度に回したときに引っかかりが出るようにスピンドルモータのコイルに定電流モードの実験電源から電源を流し込みます。少し多めに電流は0.3Aほど流しました。

初期位置

 最初に引っかかりのある位置(赤矢印の所)を調べて印をつけます。

2番目の位置 3番目の位置 4番目の位置

 同じ要領で引っかかりのある位置を探していきます。1回転で最初の位置を含めて4カ所見つかりました。

 引っかかりのある位置の2倍が極数なので8極のモータと言うことになります。

3−4.回転速度の計算

 3−2から3−3の結果を使って、3−1の式で回転速度を計算します。

f[Hz]
駆動周波数 359[Hz=1/秒]
p
極数 8[1/回転]
N[rpm] = 60[rpm/rps]*2*359[Hz]/8[1/r] = 5385rpm
N[rpm]
回転速度 5,385[回転/分]

 上記のように、約5,400rpmと言うことになります。


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4.考察

4−1.回転速度についての結論

 上記3−2.において回転速度が可変されているかどうかを調べて、結果そのような様子は見られませんでした。その回転速度は、3−3.と3−4.より、回転速度は約5,400rpmとの結論を得ました。よって、手元にあったこのHDD(WD10EACS-00D6B0)は今回も約5,400rpm固定の回転速度のHDDであると考えます。

4−2.ベンチマークについて

 WD10EACS-00D6B0は高密度で、シーゲートやHGSTの同容量の物よりヘッドが少なくなっています。高密度プラッタはシーケンシャルアクセスに有利に働きます。軽いヘッド周りの構成はヘッドの位置合わせに有利です。また、回転速度が低速なため、回転待ち時間は大きくなる物の、ヘッド位置合わせ自身は容易になる傾向があります。この点はランダムアクセスに有利です。これらの特性を合わせると、シーケンシャルアクセスの値が良好になり、少し大きめのブロックのランダムアクセスの性能が向上しやすくなります。

 このため、ベンチマークを取ると、とても低速ディスクのイメージから予想されるような物で無く、下に示すようにかなり高性能な値を示します。

WD10EACS-00D6B0 NTFS
Test Size[ MB ] 50MB100MB500MB1000MB
Sequential Read[MB/s] 114.903 104.858 100.419 100.825
Sequential Write[MB/s] 107.436 103.546 99.542 100.621
Random Read 512KB[MB/s] 49.623 46.951 41.094 40.538
Random Write 512KB[MB/s] 94.112 78.647 62.23 60.875
Random Read 4KB[MB/s] 0.796 0.644 0.587 0.581
Random Write 4KB[MB/s] 3.019 2.519 2.319 2.309
Firmware : 01.01A01
Date     : 2008/06/11
IF       : 玄人志向SATA2RAID-PCIX (Silicon Image SiI3124)
Format   : NTFS
BM時IF   : Generation 2:3.0Gbit/sec(SATA300接続)
Benchmark: CrystalDiskMark 2.1 (C) 2007-2008 hiyohiyo

 これが今回の誤解を生む原因になっているようです。しかし、残念ながら今回も回転速度5,400rpm固定のディスクでした。

 これほど静かで、低消費電力(低発熱)は珍しく、また安価です。それでこの性能であれば一つの方向性です。このシリーズはこの路線で行くのだろうなと思いました。


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